新しいEU特許システム

A. 新しいEU特許システム

新しい特許システムの中核は単一特許です。新しい特許システムに参加する欧州連合諸国内での統一された特許の保護が可能になります。現在、26ヵ国が参加することになっています。しかし、統一的に権利行使できなければ、単一特許の保護は意味を持ちません。そのため統一特許裁判所が設立されました。統一特許裁判所の決定は、新しい特許システムに参加する欧州連合諸国全てに均一に適用されます。

欧州連合の新しい特許システムはチャンスとともにリスクももたらします。欧州で活動する企業は、このことをよく理解し、前以って戦略的な選択肢を準備しておく必要があります。詳しくは本件の担当である、オイゲン・ポップ弁理士、トビアス・ブットゥケ弁護士、カイ・ルプレヒト弁理士、ティルマン・フラング弁理士、またはフェリックス・レッツェルター弁理士までお問い合わせ下さい。特に、オイゲン・ポップ弁理士は、ドイツ弁理士会など、所属する専門家組織を通じて、新しい欧州特許システムの形成に積極的に関わりました。また彼は、統一特許裁判所での代理人となり得る弁護士と弁理士のために新たに設立された専門組織「欧州特許訴訟協会」(www.eplit.eu)の提唱者です。

B. 統一特許裁判所はいよいよ始まるのか、それともまだか?

実際にはまだ、乗り越えるべき大きな障害と小さな障害が残っています。大きな障害は、統一特許裁判所協定(UPCA)発効の必須参加国であるドイツによる同協定の批准です。小さな障害は、UPCAを批准した加盟国の16カ国うち、いまのところ数カ国しか暫定適用に関する議定書(PPA)を支持していないことです。統一特許裁判所を機能させるには、UPCA加盟国のうち、少なくとも、イギリス、フランス、ドイツを含む13カ国の参加がUPCAを批准しなければなりませんが、実際には、それらの国々がさらに単一特許規則(一層の協力の強化)とPPAに署名しなければ統一特許裁判所を機能させることはできないでしょう。

Brexitおよびドイツ憲法裁判所に係属中の訴えにより大きく遅れておりますが、おそらく2019年の初めまたは中頃には統一特許裁判所システムが始まると思われます。

欧州特許保有者の方々がやっておくべきこととして以下を推奨します。

・どの特許をオプトアウト(適用除外)させるか、保有している欧州特許を分析。

・オプトアウトの選択を評価(オプトインも可能だが、1回のみ)

・通常の欧州特許にするか単一特許にするか、係属中の欧州特許出願を分析

・もし、英語での単一特許を選択するなら、長い目で見た費用の節約のために第2言語はドイツ語を選択

・分割出願と実用新案のブランチオフを検討

・特許の共有状態はどうなっているかを確認:オプトアウトには各共有者の同意が必要

・ライセンス契約の見直し:ライセンシーによる単一特許の権利行使を許諾している場合、その単一特許が無効審判に巻き込まれる可能性あり

・無効にすべき欧州特許はないか、競合他社のパテントポートフォリオを分析

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C. 重要な質問と答え

今度のEU特許システムの主な特徴は何ですか。

来たる欧州連合特許システムでは、許可されたEP出願を選択された国で有効にすることを継続すること(=従来の「EP特許」)もできるし、許可されたEP出願を、欧州連合特許システムに参加する、26の欧州連合加盟国で単一発効されるように(=新しい「単一特許」)、欧州特許庁(EPO)に、依頼することもできます。新しい欧州連合特許システムの第二の主な特徴は、新しい裁判所システムであり、統一特許裁判所が、加盟国の地方、地域、中央の部門に分権化された第一審裁判所と、ルクセンブルグにある共通の控訴院によって設立されます。

新しいEU特許システムはなぜ重要なのですか。

各特許保有者は、来たるEU特許システムの動向に、常に注意を払うべきでしょう。新しいEU特許システムの発効日において、既に存在しているEP特許ポートフォリオの移行について明確に決まってないからです。新しいEU特許システムはスペインとクロアチア(両国は後に同システムに参加することもできる)を除く、欧州連合加盟諸国全てに適用されることに注意して下さい。

どのような意味がありますか。

新しい欧州統一特許システムが発効すると、各EP特許ポートフォリオは、新たに設立される統一特許裁判所の管轄下に入ります。そのためEPOに対する9ヶ月間の異議申し立て期間の経過後でも、競合他社は、EP特許の単一の手続きで無効化を図ることができます。統一特許裁判所の判決は、EP特許が有効化された地域であって、UPCAを批准する全ての地域に効力が及ぶため、EP特許の全存続期間を通して、いわゆるセントラルアタックが可能となります。

どのような解決策がありますか。

特許保有者は、7年の移行期間の間に、現存するEP特許ポートフォリオ(または個別のEP特許)のオプトアウトを申告できます。オプトアウトとは、オプトアウトの申告が登録されたEP特許については、各国の裁判所の管轄下のままとなります。登録が無いと、アプトアウトの効力はありません。移行期間中に申告されたオプトアウトは、移行期間後も効力を有します。一方で、UPCAに関する議定書への調印が加盟国によりなされてます。この議定書は、オプトアウトの申告の早期(暫定適用期間中)の登録を可能とします。

他に考えるべきことは。

競合他社のEP特許ポートフォリオを分析すべきでしょう。もし、あるEP特許の無効化手続が新たに設立される統一特許裁判所において開始され、それ以前にオプトアウトの申告が登録されていない場合、そのEP特許はもはやオプトアウトすることができなくなります。このように、リスクだけでなくチャンスもあります。

新しいシステムはいつから実施されますか。

ドイツ憲法裁判所の判決と、その後のドイツでの批准プロセスによりますが、おそらく2019年初頭までは実施されないと思われます。必要な準備ができるよう、お客様や関係者へ事前にお知らせを送付します。

経費はどうですか。

特許の許可までは従来のEP特許と変わりません。許可の直後に起きる経費(翻訳、有効化)は、従来のEP特許に比較しておそらく大幅に削減されるでしょう。特に現段階では、有効化の費用はかからないことになっています。

翻訳料:従来のEP特許では、特許請求の範囲はEPOのその他2ヵ国語に翻訳される必要があります。(延長可能な)7年の移行期間内は、単一特許の特許権所有者は欧州連合の公用語のいずれか(手続言語が英語である場合、それ以外の場合は英語への翻訳)に翻訳する必要があります。従来のEP特許は、有効化される国によってさらに翻訳が要求されることもあります。このため、翻訳料は従来のEP特許に比較して、大幅に削減されるでしょう。

年金:規則(欧州連合)No.1257/2012により、年金は「従来のEP特許の平均的な有効化範囲での維持費用に対応するレベル」となります。単一特許の維持料金は4カ国での維持料金とほぼ同等になり、従来のEP特許を加盟国26カ国で有効化した場合より格段に安くなるでしょう。

訴訟費用:訴訟費用体系に関する第1案が準備委員会から提示されました。これによると、例えば、ドイツまたはイギリスなどEU加盟国の1カ国でのEP特許の訴訟にかかる費用より、それほど高くなることはないでしょう(いずれにせよ、統一特許裁判所に参加する25カ国全てで訴訟をする場合よりも大幅に安くなります)。

準備委員会は、ある種の訴訟(例えば、侵害訴訟や、非侵害確認訴訟)の料金について、固定料金と訴額に応じた料金との組み合わせを提案しています(例えば、訴額が500,0000ユーロ未満の場合、侵害訴訟料金は11000ユーロ;訴額が3,000,000~4,000,000の場合、侵害訴訟料金は36,000ユーロ;訴額が30,000,000ユーロを超える場合、231,000ユーロ)。他の種の訴訟(例えば、無効訴訟や、仮処分の申請)のでは、固定料金のみとなるでしょう(例えば、無効訴訟は20,000ユーロ、仮処分の申請は11,000ユーロ)。一見すると、無効訴訟の料金20,000ユーロは、EPOでの異議申立と比較すると、割高に感じられます。しかし、UPCが目指す短期間での裁判と、訴訟の敗者の(少なくとも一部の費用の)負担を考えると、無効訴訟は、異議申立の代替案として考慮に値するかもしれません。

準備委員会は、代理人費用の負担の上限額も提案しています。この上限額は、訴額に応じて定まります(例えば、訴額が250,000ユーロまでの場合、上限額は50,000ユーロ;訴額が2,000,000~4,000,000ユーロの場合、上限額は400,000ユーロ、訴額が50,000,000を超える場合、上限額は3,000,000ユーロ)。

オプトアウト費用:オプトアウト/イン費用を80ユーロとする案は取り下げられました。これにより、自由度の高い特許ポートフォリオを作ることが可能となってきました。オプトアウトが必須となる重要なコア特許を特定する必要があります。その一方で、コア特許の有効性に疑いがなければ、セントラルアタックによる無効化が成功する可能性は低いので、オプトアウトの申告は必要ありません。残りのEP特許ポートフォリオに関してはケースバイケースで判断すればよいでしょう。

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特許。デザイン。欧州での商標保護

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